いつかやってくる問題 7
妻は親の看病のために急遽一人で旅立つ。
学校のある子らは学期の区切りがつくまで、男の所に残ることになった。
男は単身赴任ならぬ、父子家庭を海外ですることになった。
父親が出張すれば、幼い子らが異国で家を守る。
結局、父の寿命というより、親戚との関係が妻の帰国を早めた。
男は自分の手帳はもちろん、オフィスの机の上にも、家の電話の側にも、実家の電話番号、町医者の電話番号、妹・親戚、そのほか頼りになりそうな人々の電話と名前を大きく紙に書いて賭っておいた。
自分が不在のときでも同僚や子が連絡をとれるようにするためだ。
土曜日の夜、外国人用のマンションの一角からパーティーの笑い声がもれてくる。
妻は玄関を出るとき、男と子たちの前で「わたしがいるから、もう大丈夫よ」と言って、その玄開の電話の上の壁に貼ってあった緊急連絡先の貼り紙を破いた。
「これが長男の嫁になるということか」。
週末、車外は暗い闇で、家々の窓の明かりが通り過ぎる。
たった壁一枚、ほんの数メートル離れただけの家庭が、それぞれ違う悩み、喜びで夜を過ごしている。
男と妻は無言のまま空港に向かっている。
奥さんが結局日本に行ったのですね。