いつかやってくる問題 5
男は言葉少なに女房に話した。
男が先に出発し、妻たちは現地での住宅が決まってから出発する。
まあ、二か月ぐらいの余裕はある。
「あなたが出発したら、非常の場合の準備をしにお父さんのところへ行くわ」男の海外赴任は、親の面倒を最期はだれが看るのか、長男である自分か、地元で親の側に住んでいる妹夫婦か、これまで不問にしてきた問題に、一気に決着をつけねばならない状況をつくりだした。
男が海外にいるとき父が倒れた場合、妹がすんなり看てくれればいいが、すったもんだのあげく、火の粉が他の親戚に飛んでくるかもしれない、のでは親戚一同も火事になりそうな家の側で生活するような不安がある。
そんな無言の圧力が今、男の肩にかかってきたのだ。
つまり、実際に親が倒れたら、親を世話するのは当然男の妻だ、というのが暗黙の了解なのだ。
もちろん、この話の先には遺産の相続、母の扶養というもっと難しい話がついている。
二か月後、男はシンガポールの空港に妻子を迎えに出た。
小学二年の下の娘が男をみつけると、飛んできて抱きついた。
こういう時にはやはり奥さんが犠牲になるんですよね…。