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2010年11月 アーカイブ

いつかやってくる問題 1

いつかはやってくる問題、それは親の介護や最期を見取ること。

こんな話を紹介します。

男は薄暗い町医者の待合室で順番を待っている。

先週海外赴任の辞令をもらい、男がとるものもとりあえず郷里の町医者を訪ねたのは、父が高齢で血圧が高く、寝たり起きたりの生活が続いていたからだ。

もつ郷里を出てから二〇年に近い。

以前、わが黍通っていた医者は亡くなり、両親は家から少し遠いけれど老人たちに評判の良いこの町医者にかかっていたのだ。

病気の両親を置いて、海外へ転勤していいものかどうか。

やはり自分だけ単身赴任して、家族は置いていったほうがいいのかどうか。

それを決めるには父の容体をはっきり掴むことが先決だった。

父は本当はどこがどれくらい悪いのか、それを知りたかったのだ。

母の話を聞くと、父は何年も前から心臓が悪く、いつ死んでもおかしくないようにオーバーに言つので、判断に困るのだ。

東京から電話をかけて先生に用件を告げて飛んできた。

年寄りの先客が何人も帰り、男の番がきた。

「いつも両親がお世話になり、よくしていただき感謝しています」と型通りの挨拶の後、すぐ本題に入った。

いつかやってくる問題 2

「実は、私に先週シンガポールへの転勤の辞令が出ました。

親をどうしたものか。

とりわけ、父は私の赴任中三年ぐらいは今のまま生きておれそうでしょうか」医者はこんな健康の長期予報を出すような相談には慣れていない。

「こればかりは寿命でね。

元気に見えても、お迎えの早い人もいるし、お父さんのように病気だと言っても長生きの人もいるしね」。

医者は考え込んでいる。

「要は三年もつかどうか、だね?」「七九歳にもなれば、この程度の心臓の不整脈が出るのはひどいというほどではない。

血圧は確かに高いが、これも薬をのみ続けることしかもうないわな。

まあ年相応の体で、お母さんが心配性なのでしょ。

もっと早く死ぬ人のほうが多いわな」。

老医者も要領を得ない。

結局、長話の結論は、父のいちばんの心配は肝臓が悪く、肝硬変の悪化による食道の静脈瘤破裂だ、という。

「要はいつボクッといくか、と聞かれてもそれはお召しだからね。

まあ普通にゆけば、三年はもつだろ。

まあ二年は大丈夫かな」。

微妙な回答だな、と男はすっきりしない。


海外赴任をとるか、病気の家族を世話するか、なかなか微妙な問題です。

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